相続人関係図とは?作成するメリットや書き方、テンプレートを紹介

相続人関係図を作りたいと思っていても、作成方法がわからず困っていませんか?そもそも、相続人関係図が何かをわかっていない方も多いでしょう。

相続人関係図の作成は義務ではありませんが、事前に用意しておくと手続きをスムーズに進められます。

今回は、相続人関係図とは何かを解説するとともに、作成するメリットや作り方をわかりやすく解説します。すぐに使えるテンプレートご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続人関係図とは、被相続人と相続人の関係を示した図面
  • 事前に作成すれば相続関係を明確化して手続きを円滑にできる
  • 法務局などの無料テンプレートを利用して作成するのが便利

相続人関係図とは?

相続人関係図とは、亡くなった方と相続人の関係をツリー構造で整理した図面です。

いわゆる家系図のようなもので、亡くなった人を中心に、相続人が何人いてどのような続柄なのかを記します。内容がシンプルなので、誰でも簡単に作成可能です。

「相続人関係図」と「相続関係説明図」は同義であり、どちらを使用しても問題ありません。

相続人関係図を作成するメリット

相続人関係図は、必ず作成しなければならない書類ではありません。しかし、事前に作成しておけば、以下のメリットがあります。

相続関係を明確化できる

相続人関係図があれば、被相続人法定相続人との関係が一目でわかります。 法定相続分も間違わなくなるでしょう。

特に以下のケースでは、家族関係や人数を把握しにくいため、事前に作るのが望ましいと言えます。

家族関係や人数を把握しにくいケース
  • 兄弟や子どもが多い
  • 養子がいる
  • 離婚・再婚を伴う
  • 親に代わり相続する代襲相続など

相続関係を図面化しておかないと、誰が相続人になるのかがわかりません。法務局や金融機関、税理士などに相続関係を伝える際に手間がかかるうえに、いちいち戸籍謄本をすべて持参して確認することも大変です。 

遺産分割協議は、すべての法定相続人が参加するため、関係が複雑だと連絡が漏れることもあります。これらのリスクを回避するために、あらかじめ作成して情報を正確に把握しておくのがよいでしょう。

戸籍謄本等の原本還付ができる

相続登記では、相続関係を明らかにするために戸籍謄本等を提出しますが、相続人関係図を提出すれば戸籍謄本等の原本を返還してもらえます。

原本が返却されることは、大きなメリットです。なぜなら、原本を求められる手続きが多いためです。

戸籍謄本等は法務局、銀行、証券会社、裁判所等の複数関係先に提出する必要があり、そのたびに書類を収集するのは非常に手間がかかります。戸籍謄本等が多いと、コピーを取るだけでも大変です。

原本還付を受ければ書類の収集は1回で済むため、手間と金銭的な負担を省けます。

承認不要ですぐに提出できる

相続人関係図を提出する際に、事前に他の機関から承認を得る必要がありません。ご自身で作成したら、すぐに提出できるので、手続きをスムーズに進められます。

一度作成すれば簡単に利用できるので、手続きに慣れていない方でもハードルは低いと言えます。

相続人関係図が必要なシーン

相続人関係図が必要なシーンは多岐にわたります。どのような場面で必要になるかを、ここで確認しておきましょう。

不動産の名義変更

相続した不動産の所有名義を変更する際、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本類と一緒に、相続人関係図を法務局に提出します。

関係図がなくても名義変更は可能ですが、添付資料の原本還付を受けられます。戸籍謄本類は他の手続きでも必要なので、原本還付によって手間や費用を節約できるでしょう。

預貯金の解約・払い戻し

金融機関で被相続人名義の預貯金を解約・払い戻しをする際に、相続人関係図の提出を要求されることがあります。

必要書類は金融機関ごとに異なるため、事前に確認を取りましょう。

遺産分割調停の申し立て

遺産分割協議で話がまとまらず、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる際に、相続人関係図を提出します。

申し立ての際は、申立書や遺産目録、当事者目録などと一緒に提出しましょう。

相続人関係図と法定相続情報一覧図の違い

相続人関係図と似たようなものに「法定相続情報一覧図」があります。法定相続情報一覧図とは、法務局が相続関係を証明する書類です。

どちらの文書も相続関係をわかりやすく整理した点では同じですが、以下の違いがあります。

 相続人関係図法定相続情報一覧図
法務局の認証なしあり
交付申請の有無なしあり
交付期間即日1週間~10日
書き方自由度が高い様式や記載内容を遵守
戸籍謄本の提出必要不要

戸籍謄本等の提出先が少ない場合は、相続人関係図を利用するのが一般的です。ただし、どちらを利用すべきかは、相続人の状況等によって異なります。

ここでは、2つの文書の異なる点を解説するので、どちらを利用すべきか迷ったときの参考にしてみてください。

法務省の認証があるか

相続人関係図との大きな違いは、法務局の認証があるかという点です。

法定相続情報一覧図は、法務省の「法定相続情報証明制度」により公式に認証された公文書なので、これ1枚で相続関係を正式に証明できます。

相続人関係図は、あくまで個人が作成したもので、公的な証明にはなりません。そのため、登記申請をする際は、戸籍謄本類を同時に提出する必要があります。 しかし、手続き先が少ないときは、相続人関係図の作成だけでも十分です。

記載ルールが厳格か

法定相続情報一覧図は、記載事項が厳格に決められており、法務局の定める書式に従って作る必要があります。

一方で、相続人関係図に決まった書式や記載内容はありません。一覧図に記載できない情報やさまざまな事項を記入できるため、工夫次第でわかりやすく作成できます。

必要書類の提出を省略できるか

法定相続情報一覧図は公的に証明できる文書なので、内容確認のための書類提出を省略できます。

一方で、相続人関係図はご自身で作成しただけで証明力はないため、下記の書類を揃えて提出します。

必要書類
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
  • 被相続人の除票または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票

一覧図があれば、相続登記や銀行口座・有価証券の名義変更、年金手続きなどにおいて、必要書類を集める手間が省けます

相続人関係図の作成手順

相続人関係図は、3つのステップで作成できます。 

  1. 必要書類を用意する
  2. 情報を整理する
  3. 相続人関係図を作成する

1.必要書類を用意する

作成にあたり、以下の4つの書類を揃えましょう。

書類の種類取得先1通あたりの取得費用
被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本等亡くなられた方の本籍地の市町村役場戸籍謄本:450円
除籍謄本:750円
改製原戸籍:750円
被相続人の住民票の除票、または戸籍の附票住民票:市町村役場
戸籍の附表:本籍地の市町村役場
300円
相続人全員の戸籍謄本相続人の本籍地の市町村役場450円
相続人全員の住民票市町村役場300円

相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集めなければならず、時間と手間がかかります。被相続人が長年同じ場所に住んでいれば簡単ですが、あちこちに戸籍を移動している場合は、移転先の役場から戸籍をすべて集めなければなりません。

戸籍謄本の取得方法は、主に4つあります。

戸籍謄本の取得方法
  • 窓口
  • 郵送
  • コンビニ
  • 委任状を作成し代理人が取得

直接窓口へ訪問する時間がない場合は、郵送かコンビニで取得する方法がおすすめです。また、委任状を作成すれば代理人による取得も可能です。

ただし、コンビニでの取得は、すべての自治体が対応しているわけではありません。対応しているかどうかは「コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付」でチェックできます。

2.情報を整理する

書類を集めたら、必要な情報を整理します。書類に記載されたすべての情報は必要ではないので、収集した書類から以下の情報を抜粋しておきましょう。 

被相続人氏名
生年月日
最後の住所地
本籍地
死亡日
相続人氏名
生年月日
現在の住所

戸籍謄本等は数が多くてわかりづらいため、出生から死亡までの順に通し番号を振っておくと見やすくなります。鉛筆で直接番号を書き込んだり、付箋を貼り付けたりしておくとよいでしょう。

3.相続人関係図を作成する

記載の準備ができたら、実際に相続人関係図に記載していきます。決まった形式はありませんが、家系図のようなツリー構造にすると、それぞれの関係性や数などを正確に把握できます。 

相続関係が複雑で1枚に収められないなら、複数枚にわたっても大丈夫です。

作成に使う用紙は手書きも可能

作成に使う用紙の大きさに決まりはないので、相続人の数に適した大きさを選びましょう。作成にあたっては、手書きとパソコンのどちらでも問題ありません。

しかし、手書きは配置の崩れが起こりやすく修正時に面倒なので、基本的にはパソコンで作成したほうがよいでしょう。ワードやエクセルなどのソフトで文章や図形が入力できれば、整理された見やすい図を作成できます。

手書きで作りたい場合は、定規などを使って丁寧に書きましょう。

相続人関係図の書き方

決まった書き方はありませんが、一般的な記載事項を押さえておくと、スムーズに作成できます。

ここでは、具体的な書き方の手順をご紹介します。

1.タイトルを書く

最初にタイトルを書きましょう。特に決まりはありませんが、「被相続人〇〇 相続人関係図」といった具合に、誰の相続なのかが一目でわかるようにして、書面上部の目立つところに書きましょう。

2.被相続人の情報を書く

「被相続人」と記載したうえで、故人の氏名などを書きます。被相続人の情報は、以下の4つを記載すれば十分です。

被相続人の情報
  • 氏名
  • 出生日
  • 死亡日
  • 最後の住所
  • 最後の本籍

3.被相続人との続柄の情報を書く

被相続人と相続人の続柄を、以下のように記載します。

被相続人と相続人の続柄
  • 長男
  • 次女 など

記載する内容がわからなければ、戸籍謄本に載っている続柄を参考に書きましょう。

4.相続人の情報を書く

すべての相続人について、以下の情報を記載します。

相続人の情報
  • 指名
  • 出生日
  • 現在の住所

相続人全員を漏れなく記載しましょう。

5.関係性を線で結ぶ

必要な情報を記載できたら、それぞれの人を線でつなぎ、ツリー構造にします。明確なルールはありませんが、以下の記載方法が一般的です。

一般的な関係性の線の記載方法
  • 親子関係:一重の縦線
  • 婚姻関係:二重の横線

基本的には一本線で結び、婚姻関係がある方は二重線でつなぐと、わかりやすい図に仕上がります。

相続関係説明図をスムーズに作成する方法

相続人が多い場合や、家族関係が複雑なケースでは、作成に多大な時間を費やします。このような場合に、スムーズに作成する方法をご紹介します。

法務局の法定相続情報一覧図を参考にする

法務局のホームページにある「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」には、さまざまな相続ケースに使えるエクセルデータが公開されています。被相続人との関係性に最も近いものを選んで作れば、ご自身で一から作るより簡単です。

エクセルデータは「法定相続情報一覧図」のものですが、記載内容はほぼ同じなので、タイトル部分のみ「相続人関係図」に変更して使いましょう。

無料のエクセルテンプレートをダウンロードする

インターネット上には、相続人関係図のエクセルテンプレートを無料でダウンロードできるサイトが複数あります。それを利用すれば、住所や名前などを入力するだけで、簡単に効率よく作成できます。

操作性や見やすさなどを比較して、最も適したテンプレートをダウンロードしましょう。

専門家に依頼する

相続人関係図を作るにあたり、戸籍謄本一式すべてを集める時間がない場合は、専門家を活用するのも1つの手です。

司法書士や弁護士などは、職権によって戸籍謄本を取得できるので、個人で集めるよりも時間がかからず便利です。専門的な知識に基づいて作るため、間違いが起こる心配もありません

専門家によって作成費用は異なるので、事前に見積もりを出してもらうことをおすすめします。

ほかの手続きもあわせて依頼するなら、それも踏まえて専門家を選びましょう。

専門家対応業務費用
弁護士紛争解決
裁判手続きの代行
着手金:20~60万円
報酬金:経済的利益の4~16%
司法書士相続登記不動産登記:1件5~10万円
相続手続き全般:2~50万程度
税理士税務相談
相続税申告
税務調査への対応
20~50万円
行政書士預貯金、株式、自動車の名義変更相続人調査:5~6万円
遺産分割協議書の作成:3~5万円
名義変更:2~5万円

対応業務の範囲が最も広いのは弁護士です。弁護士は唯一、本人に代わって法律行為を行う代理権があるため、遺産分割の交渉や調停に対応できます。遺産をめぐって紛争が起きた場合は、迷わず弁護士に相談しましょう。

ただし費用が高いので、見積もりを取っていくつかの事務所を比較することが大切です。

書類作成だけ依頼するなら、比較的費用の安い行政書士への相談をおすすめします。

相続関係説明図を作成するときの注意点

ご自身で作るときは、以下の2点に注意が必要です。

現住所には住民票の住所を記載する

相続人の現住所は、住民票に記載されている住所を正確に記載しましょう。

例えば、住民票上の住所が「一丁目1番地1」なら「1-1-1」などと略さずに、そのまま書きます

また、氏名も戸籍どおりの記載が必要なので、旧字体が使われている場合は注意が必要です。

相続か遺産分割かを明確にする

相続財産に不動産が含まれている場合は、「相続」もしくは「遺産分割」を明示する必要があります。

不動産を相続する方は名前の横に「相続」、相続しない方は「遺産分割」と添え書きしましょう。

また、相続放棄をした方がいれば、名前の横に「相続放棄」と記載します。

不動産を相続する方 相続
相続しない方 遺産分割
相続放棄をした方 相続放棄

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