相続登記申請書の書き方がわからずお困りではないでしょうか?
相続登記とは、亡くなった方の不動産を引き継ぐときに必要な手続きです。ご自身で手続きされる方もいますが、申請書の記載方法や相続の内容に応じた必要書類の準備など、難しい手続きでもあります。
この記事では、相続登記申請書の書き方をわかりやすく解説します。添付する書類や書類の綴じ方、申請方法も解説しますので相続登記の申請が必要な方はぜひ参考にしてください。
- 相続登記申請書とは相続登記をするときに法務局へ提出する書類
- 相続登記申請書には相続の方法によりそれぞれフォーマットがある
- 添付する書類も相続の方法により異なる
相続登記申請書とは
相続登記申請書とは、相続登記をするときに法務局へ提出する書類です。相続登記とは、不動産を引き継いだときに持ち主の名義を変更する手続きのことです。
申請書は、司法書士に依頼する場合は作成してもらえますが、ご自身で記載する方もいます。
相続登記の手続きをしないままでいると、亡くなった方がいつまでも不動産の所有者として記録に残ったままになってしまいます。
不動産の名義が変更されていないことにより、土地の権利関係がはっきりせずトラブルになったり、売却や運用などの活用をすることが困難になったりするため、早めの手続きが大切です。
相続登記の申請書の書き方
相続登記申請書の書き方を確認していきましょう。
相続登記申請書には決まった書式がありません。ご自身で作成する際は、法務局のホームページからフォーマットをダウンロードして作成するとスムーズです。
申請書は、相続の方法によりフォーマットが異なります。法務局のホームページにはそれぞれの事例に合わせた記載例も掲載されているので、参考にしながら書き進めましょう。
1.登記の目的
まずは「登記の目的」を記入します。
登記の目的の書き方は以下の3パターンです。
所有の状態 | 記載例 |
---|---|
被相続人が不動産の所有権すべてを持っている | 所有権移転 |
被相続人が所有権の一部(共有持分)を持っている | (被相続人の氏名)持分全部移転 |
複数の不動産の所有権全部と共有持分を持っている | 所有権移転及び(被相続人の氏名)持分全部移転 |
不動産が単独名義か共有不動産かは、固定資産評価証明書の「摘要」の欄に記載されているので確認しましょう。
2.原因と日付
「原因」は登記をすることになった理由です。相続が起きた日付を記載し、日付のあとに「相続」と記載します。
原因:〇年〇月〇日相続 |
相続が起きた日付とは、被相続人が亡くなった日付です。戸籍謄本に記されている死亡日を記載します。遺産分割協議により相続が決定した日付ではないため注意してください。
3.被相続人と相続人について
相続人と被相続人の氏名、相続人の住所と連絡先電話番号を記載し、相続人の氏名の横に押印します。相続人の名前の前には「被相続人(氏名)」と被相続人の氏名を記します。申請書の余白には捨印を押しておくとよいでしょう。
この欄は「相続人が1人の場合」「相続人が2人以上いる場合」「共有持分である不動産を相続する場合」により記載方法が異なります。
それぞれの記載例を確認しておきましょう。
相続人が1人の場合
相続人が1人の場合で、所有権すべてを相続する場合は以下のように記載します。
相続人 (被相続人 山田 太郎) 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇 山田 一郎 印 連絡先の電話番号 000-0000-0000 |
相続人が2人以上いる場合
相続人が2人以上いる場合は、名前の前に持分を記載しなければなりません。「持分2分の1」などの文言を相続人の名前の頭に付けます。
相続人 (被相続人 山田 太郎) 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇 持分2分の1 山田 一郎 印 連絡先の電話番号 000-0000-0000 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇 持分2分の1 山田 二郎 印 連絡先の電話番号 000-0000-0000 |
共有持分である不動産を相続する場合
共有持分である不動産を相続する場合は、被相続人の氏名・相続人の氏名・住所・電話番号と「持分2分の1」などのご自身の持分を記載します。
相続人 (被相続人 山田 太郎) 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇 持分2分の1 山田 一郎 印 連絡先の電話番号 000-0000-0000 |
4.添付情報
添付情報とは、登記申請を提出する際に添付する書類の情報です。通常は「登記原因証明情報」「住所証明情報」「代理権限証明情報」と記載します。
それぞれの、添付する書類の一例は以下のとおりです。
登記原因証明情報 | 戸籍謄本など相続内容を証明する書類 |
---|---|
住所証明情報 | 住民票など相続人の住所を証明する書類 |
代理権限証明情報 | 代理人が相続登記する場合の委任状 |
5.登記識別情報の通知希望
次に登記識別情報の通知希望の有無を記載します。登記識別情報とは、その不動産の持ち主であることを証明する書類です。以前の「登記済権利証」にあたり、所有者であることを証明する番号が記されています。
権利証は受け取って保管しておいたほうがよいので、発行してもらいましょう。法務局のフォーマットには「登記識別情報の通知を希望しません」のチェック欄が設けられていますが、チェックを入れると発行されないためチェックを外して提出しましょう。
6.申請日・管轄法務局
相続登記を申請する日と、提出先の法務局の名称を記載します。提出先の法務局は、その不動産を管轄する法務局です。
管轄の法務局は、法務局のホームページにある「管轄のご案内」で検索できます。
7.課税価格と登録免許税
申請書には、相続登記に必要な登録免許税を計算し、課税価格とともに記載する必要があります。
記載方法は以下のとおりです。
課税価格 金〇〇〇万円 登録免許税 金〇万円 |
課税価格とは相続税の課税対象になる固定資産の価格のことです。固定資産評価証明書か、課税明細書の「価額」の欄に記載されている金額から1,000円未満を切り捨てた金額になります。
課税価格を算出したら、その価格をもとに登録免許税を計算します。
登録免許税の計算方法は以下のとおりです。
8.不動産の表示
不動産の表示は、登記事項証明書に記載されている「表題部」の内容をそのまま記載します。
土地と建物の記載情報は以下のとおりです。
土地の記載内容 | 不動産番号 所在 地番 地目 地積 |
---|---|
建物の記載内容 | 不動産番号 所在 家屋番号 種類 構造 床面積 |
9.登録免許税分の収入印紙を別紙に貼付
登録免許税は、登記申請書の余白に貼りつけるか、別紙に貼りつけて提出します。
別紙で用意する際は白いA4用紙で「収入印紙貼付台紙」を用意し、台紙に収入印紙を貼付します。収入印紙に割印は不要です。
相続登記申請書に添付する書類
相続登記申請書に添付する書類は、相続の方法により異なります。
相続の方法には「遺言書による相続」「遺産分割協議による相続」「法定相続どおりの相続」があり、共通して必要になる書類は以下の書類です。
- 戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 相続登記申請書
遺言書による相続
遺言書に従って法定相続人が相続する場合に必要なのは以下の書類です。
- 戸籍謄本(死亡した記載があるもの)
- 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 相続登記申請書
- 遺言書
遺言書による相続の場合、被相続人が亡くなったと記載されている戸籍謄本が必要です。
また、相続の内容を示すため遺言書を提出しなければなりません。遺言書には種類があり、家庭裁判所で検認の手続きが必要な場合があります。
「秘密証書遺言」や自宅などで保管されていた「自筆証書遺言」の場合は、検認の手続きを行い「検認済証明書」が発行されていなければ遺言書として認められません。
公証人と作成し、原本が公証役場に保管される「公正証書遺言」の場合は、正本または謄本を提出すれば認められます。
遺産分割協議による相続
亡くなった方が遺した遺産をどうやって分配するかを話し合う「遺産分割協議」で遺産の分配を決定した場合は、以下の書類が必要です。
- 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まですべて)
- 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 相続登記申請書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
戸籍謄本は、被相続人の出生から死亡まですべて提出する必要があります。
遺産分割協議には法定相続人(遺産を相続できる権利のある方)全員が参加する必要があり、相続登記を申請する際はその話し合いの結果をまとめた「遺産分割協議書」が不可欠です。
また、協議内容に合意したことを証明する、相続人全員の印鑑証明書も添付しなければなりません。
法定相続どおりの相続
法定相続分に沿って相続する際に必要な書類は、以下のとおりです。
- 戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まですべて)
- 被相続人の住民票除票(もしくは戸籍の附票)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 不動産取得者の住民票
- 相続する不動産の固定資産評価証明書
- 相続登記申請書
法定相続どおりの相続の場合も、相続人にあたる人物を証明するために、被相続人の出生から死亡まですべて提出する必要があります。
相続登記の登記申請書の綴じ方
相続登記の登記申請書の綴じ方には厳密な決まりがありませんが、一般的な並べ方のルールがあります。ルールにしたがって綴じておくとよいでしょう。
登記申請書の一般的な並べ方は以下の順序です。
- 相続登記申請書・収入印紙貼付台紙
- 委任状
- 相続関係説明図
- 原本の返却を希望する書類のコピー
- 原本の返却を希望する書類の原本
相続登記申請書と収入印紙貼付台は1セットです。ホチキスでとめて契印を押しましょう。委任状と相続関係説明図は、必要な場合にのみ準備します。
原本の返却を希望する場合はコピーと原本の両方を提出し、原本を返却してもらいます。
相続登記申請書の申請方法
相続登記の申請方法は、以下の3とおりです。
- 管轄の法務局に直接持っていく
- 郵送で申請する
- インターネットで申請する
それぞれの申請方法を確認しておきましょう。
【窓口】管轄の法務局に直接持っていく
法務局が近い方は、法務局の窓口に直接相続登記申請書類を提出すると簡単に提出できます。法務局であれば、わからないことを直接確認し、不備があればその場で訂正することも可能です。その際は、申請書に押印したものと同じ印鑑が必要になるので、持参しておくとよいでしょう。
提出先は、その不動産の管轄の法務局です。最寄りの法務局ではないので注意してください。
【郵送】郵送で申請する
法務局まで距離がある方、平日の日中に時間を作るのが難しい方は、管轄する法務局に郵送する方法が便利です。
郵送は、封筒に「不動産登記申請書在中」と記載し、書留郵便やレターパックなど書類の到着がわかる方法で送付します。
返却してほしい書類がある場合や、登記完了証を郵送で返却してもらいたい場合は、以下のものを同封して送付しましょう。
- 宛名を記載した返信用封筒
- 書留の料金+210円の郵便切手
郵送は便利ですが、もし書類に不備があった場合は、法務局に出向かなければなりません。
また、到着が間に合うか確認して送付する必要があります。提出書類は、法務局への到着日が申請の日になります。到着まで数日かかるため、期限が迫っている場合は注意が必要です。
【オンライン】インターネットで申請する
相続登記はオンラインで申請することも可能です。「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスし、申請者情報を登録すれば手続きができます。
ただし、戸籍謄本や住民票などの添付書類は、法務局に持参や郵送で提出する場合がほとんどです。結局は、持参や郵送と手間が同じなので、インターネットで提出するメリットは少ないかもしれません。
インターネットの知識がない方が行うには難易度が高いため、持参や郵送で提出するとよいでしょう。
相続登記について知っておきたいポイント
ここからは、相続登記について知っておきたいポイントについて解説します。
知っておきたいポイントは以下の3つです。
- 書類の原本は返却してもらえる(原本還付)
- 司法書士への依頼には委任状が必要となる
- 2024年4月に相続登記が義務化される
1つずつ確認していきましょう。
書類の原本は返却してもらえる(原本還付)
相続登記で提出した書類は、「原本還付」により原本を返却してもらうことが可能です。
原本還付が受けられるのは以下の書類です。
- 戸籍謄本
- 除籍謄本
- 改製原戸籍謄本
- 住民票
- 住民票の除票
- 戸籍の附票
- 印鑑証明書
- 遺言書
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書
上記の書類は原本還付が受けられますが、登記申請書・委任状・相続関係説明図は原本還付ができません。
「遺産分割協議書」や「遺言書」は原本を返却してもらわなければ、他の相続手続きができなくなってしまいます。これらの書類は、銀行や証券会社の手続きや相続税申告のときに提出を求められます。
新たに財産が出てきた際にも必要になるので、必ず原本を返却してもらうようにしましょう。
なお、「相続関係説明図」を提出することにより、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本のコピーは提出不要になります。
原本還付の流れは以下の手順で行います。
- 返却してほしい証明書類をコピーする
- コピーの余白部分に「これは原本の写しである。」と記入する
- 署名・押印する
- 複数枚の場合は契印し、左側2カ所をホチキスで止める
- 原本と一緒にコピーを提出する
他の相続の手続きでも、同じ証明書類の提出を求められるケースがよくあるため、証明書類の収集の手間やコストを考えると原本還付を受けるのがおすすめです。
司法書士への依頼には委任状が必要となる
相続登記の手続きを代行してもらう場合には「代理権限証明情報」という委任状の提出が必要です。
司法書士などの専門家に依頼したい場合は、申請する本人が代理人を選任し、委任する内容や委任者が記載された書類を提出しなければなりません。
委任状に決まった書式はありませんが、最低限必要な記載事項は次のとおりです。
- 代理人の住所・氏名
- 委任者の住所・氏名(実印)
- 委任する内容
- 不動産の情報
- 委任状を作成した年月日
不動産を相続する方が何らかの理由で直接申請にいけないため、他の家族などに依頼する場合にも委任状が必要になります。
ただし、親権者・未成年後見人・成年後見人などの法律で認められた代理人が申請する場合は不要です。例えば、相続人が未成年の場合、親が代わりに手続きするのであれば問題ありません。その場合は、戸籍の全部事項証明書等が「代理権限証明情報」となります。
2024年4月に相続登記が義務化される
相続登記は2024年4月1日から法律により義務化されます。従来は法的なルールが定められていませんでした。しかし、義務化することで、相続や遺贈により不動産を譲り受けたときは「相続の開始および所有権を取得したことを知った日から3年以内」に名義を変更する義務が発生します。
正当な理由がなく、3年の期限を過ぎても然るべき手続きを行わなかった場合、10万円以下の罰則が科せられるため注意が必要です。
これは、法改正以前に譲り受けた不動産についてもルールが適用されます。法改正前から引き継いでいた土地があり、その土地の手続きが完了していないことがわかっていた場合は、施行日である2024年4月1日から3年以内に手続きする必要があります。
亡くなった方が不動産を所有していた事実を知らなかった場合は、施行日ではなく事実を知った日を起算日として3年の間に登録が必要です。
相続登記を行わないことで、土地の持ち主がわからない「所有者不明土地」の問題が深刻化しているため、法律により対策が取られるようになりました。
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