遺影という言葉は知っていても、具体的にどのようなものか把握していない方も多いのではないでしょうか?また、葬儀後はいつまで飾ってよいのか迷ってしまいますよね。
葬儀では祭壇に遺影を飾るのが一般的ですが、写真の選び方にはいくつかポイントがあります。遺影の選び方やタブーを把握しておくと、葬儀の準備がしやすくなるでしょう。
今回は、遺影の意味や選び方について解説します。くわえて、飾る期間と処分方法についてもご紹介するため、ぜひ参考にしてください。
- 遺影とは、故人を偲ぶために通夜や葬儀の祭壇に飾る故人の写真のこと
- 遺影には、亡くなる1~5年以内に撮影した故人らしさが伝わる写真を選ぶ
- 遺影を飾り続けても問題ないが、仏壇の中と上に置くのはタブー
遺影とは?
遺影(いえい)とは、葬式の祭壇に飾る故人の写真です。宗教的な意味合いはなく、故人を偲ぶために通夜や葬儀の場に飾られます。
遺影は戦時中に亡くなった方の写真や肖像画を飾って供養したのが始まりです。遺影を飾ることで故人を身近に感じられ、心のよりどころとなることから、現代でも遺影を飾る風習が引き継がれています。
写真を使用する場合がほとんどですが、肖像画でも問題はありません。昔は漆塗りのフレームに写真を入れていましたが、最近は木目調やパステルカラーなどのフレームに入れることもあります。
また、祭壇に用意されたモニターに写真をスライド式に映し出すなど、新しいサービスを提供する葬儀会社もあり、遺影の形も時代とともに変化しています。
通夜当日のお昼までに準備する
遺影は通夜当日のお昼までに準備しておきましょう。通夜の開始時間は17時~19時が一般的であるため、それまでに必要なものをすべて揃える必要があります。
直前になって遺影を準備することも可能ですが、その場合、何かあったときに対応が遅れることも考えられます。
適切な写真が見つからなかったり、フレーム選びに時間がかかったりなどの可能性を考慮し、早めに手配しておきましょう。
遺影写真の選び方
遺影に使う写真にルールやマナーはありません。ただし、いくつか選ぶときのポイントがあります。
遺影写真を選ぶときは、以下3つのポイントを重視しましょう。
故人らしさが伝わる
遺影にする写真は、故人の人柄や魅力を感じられるものがおすすめです。表情や服装など、その人らしさが伝わる写真を選べば、見ただけで生前の姿を思い出せます。
具体的には、以下のような写真が遺影に向いています。
- 家族や友人と写っている
- 趣味を楽しんでいる
- 自然体で撮影されている
故人が真面目な方なら引き締まった表情の写真、穏やかで優しい方なら笑った顔の写真を選ぶのがおすすめです。
故人と参列者の関係性も考慮すべきですが、最終的には遺族がよいと思える写真を選ぶことが大切です。葬儀後に自宅で飾ることも考えたうえで、いつまでも故人がそばにいてくれるような写真を選びましょう。
5年以内に撮影している
撮影時期に決まりはありませんが、亡くなる1~5年前の写真を選ぶのが一般的です。
周囲が見慣れていた頃の写真を使えば、故人の思い出を振り返りながらお別れできます。何年前までの写真を選ぶべきか迷ったときは、5年以内を目安にするとよいでしょう。
若過ぎると生前の姿との差が大きくなり、違和感が生じます。遺影は故人の面影を感じて偲ぶためにあるものなので、年数が経ちすぎた写真は避けましょう。
ただし、最近の写真が見つからない場合や生前に病気を患っていたときは、元気だった頃の写真を使っても支障はありません。状況に応じて柔軟に対応しましょう。
ピントが合っている
ピントが合っていて、画素数の高い写真を選ぶことも大切です。ピントがズレていて解像度が低いと、写真を引き伸ばしたときに被写体がぼけてしまいます。
服装や背景はあとで加工できるので、ピントと画素数を優先しましょう。原寸大で200万画素以上の写真を選ぶのがポイントです。最近のスマホやデジタルカメラで撮影した写真なら、ほぼ心配ありません。
葬式で故人と対話する気持ちになれるように、カメラ目線の写真を選ぶことも重要です。顔が正面を向いている必要はありませんが、カメラ目線のものが適しています。
遺影はいつまで飾る?
遺影を用意したものの、いつまで飾るべきかわからない方も多いでしょう。ここでは、飾る時期の目安をご紹介します。
四十九日まで飾る
遺影は四十九日の法要まで飾るのが一般的です。四十九日まで故人の魂がこの世で過ごすと考えられており、遺骨と一緒に後飾り祭壇に飾ります。
後飾り祭壇とは、遺骨を祀るために自宅に設けられる祭壇です。後飾り祭壇は四十九日を過ぎたあとに片付けるため、遺影を飾るのも四十九日までとなります。
神道は五十日祭までですが、キリスト教は宗派によって異なります。カトリックは追悼ミサまで、プロテスタントは召天記念日の記念式までです。
お盆や法事で使わないなら、処分しても問題ありません。
ずっと飾るのも問題ない
飾る時期に決まりはなく、四十九日を過ぎて飾り続けても問題はないとされます。
遺影を自宅に飾るのは縁起や風水的によくないと言う方もいますが、決して不吉なものではありません。故人と家族をつなぐ大切なものなので、飾るかどうかは個人の自由です。
実際、葬儀を終えたあとも遺影を手元に残しておく方は多いです。
遺影を飾るときの注意点とタブー
遺影の選び方にタブーはありませんが、飾り方にはいくつか注意点があります。
仏壇の中と上には置かない
四十九日を過ぎると後飾り祭壇は片付けるので、四十九日後は遺影を仏壇の近くや仏間に飾ることが一般的です。ただし、仏壇の中や上に置くのはやめましょう。
仏壇にはご本尊が飾られており、仏様のいる場所なので、仏壇の中や上に飾るのは失礼です。
飾るなら仏壇の近くか、床間や壁にしましょう。壁にかけるときは、見下ろす高さに飾らないようにします。
南向きか東向きに置く
飾る方角にルールはありませんが、世間一般的には東向きや南向きがよいとされています。置き場所に迷ったときは、方角を基準にして飾るとよいでしょう。
ただし、日当たりのよい場所に置くと日焼けするので、直射日光の当たらない場所を選ぶのがおすすめです。
家の事情に合わせて、飾る場所を検討しましょう。
遺影がいらない場合は?
遺影は葬儀には欠かせないと考える方もいますが、必ず飾る必要はありません。
ここからは、遺影を飾らない場合の対処法を解説します。
遺影がなくても問題はない
遺影は必ずしも用意する必要はありません。葬儀は古くから日本で行われてきた儀式ですが、遺影が飾られるようになったのは写真技術が普及してから数十年ほどです。
遺影を飾るかどうかは個人の自由です。昨今は葬儀の形式も多様化しており、故人の希望で遺影を飾らなかったり、肖像画を飾ったりする方もいます。
遺族で話し合って決める
遺影を飾るかどうかは、遺族や親族でよく話し合って決めましょう。
遺影は絶対に必要なものではありませんが、祭壇にあったほうが故人の存在を感じやすいメリットがあります。多くの葬儀では遺影を飾っているので、参列者の人数や故人との関係性も考慮して判断することが大切です。
故人が遺影を望まなかった場合でも、「本当に飾らなくてよいか」「遺影の代わりに何を用意するか」など、よく話し合って決めましょう。
遺影の処分方法
葬儀後の遺影の扱い方について、明確な決まりはありません。処分の仕方も自由ですが、ここでは主な処分方法をご紹介します。遺族で話し合い、適切な方法を選択しましょう。
ゴミとして処分する
遺影に宗教的な意味合いはないので、自治体のルールに従えば、通常のゴミとして処分しても差し支えありません。
写真は可燃ゴミとして処分できますが、額縁は不燃ゴミに当てはまることが多いので、事前にゴミの分別ルールを確認しておきましょう。
なお、野外焼却は法律で原則禁止されています。そのため、庭などで燃やさずに、自治体の規定に従った方法で処分します。
そのまま捨てるのに抵抗がある場合は、遺影を白い布や紙で包んだり、塩を振ったりしてから捨てるとよいでしょう。白い色や塩には浄化作用があり、お清めになると言われています。
一度処分すると元には戻せないので、捨てる前に家族でしっかりと話し合っておきましょう。周囲の同意を得ずに勝手に捨てるとトラブルになるため、事前に相談しておくのが無難です。
神社やお寺に供養してもらう
ゴミとして処分するのに抵抗感がある方は、お寺や神社に供養をお願いするとよいでしょう。お寺や神社では供養を行ったあとにお焚き上げをするので、精神的負担が少ない方法だといえます。
宗派は関係ないので、神社とお寺のどちらに依頼しても問題ありません。先祖代々から供養を依頼している菩提寺(ぼだいじ)を選ぶ必要はないので、ふさわしい供養場所を探しましょう。
依頼先や地域によってお焚き上げの費用は変動しますが、目安は1〜5万円です。ある程度の費用はかかりますが、きちんと供養できるので、抵抗感が和らぎ気持ちもすっきりするでしょう。
葬儀社に回収してもらう
葬儀社に依頼して処分してもらうのも一つの方法です。葬儀を依頼した会社なら、無料で回収してくれる場合があります。供養するほどではないけどゴミとして処分するには抵抗があるという方におすすめの方法です。
ただし、遺影の処分のみ受け付けている葬儀社は少なく、葬儀から時間が経っていると断られるケースが少なくありません。
処分にかかる費用も葬儀社ごとに異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
遺影に関するよくある質問
遺影に関するよくある質問をご紹介します。
遺影の準備にかかる料金相場は?
遺影の準備にかかる料金の相場は、ケースによって異なります。
例えば、フォトスタジオで撮影を行ってもらう場合、写真やフレームにくわえて、スタジオ代や撮影代が加算されます。結果として、総額1万円~3万円になることが多いです。
撮影済みの写真を加工だけ行ってもらう場合、フレーム代を含めて1万5,000円ほどになります。写真の撮影から加工まで遺族側で行うのであれば、1万円以下に収まるケースが多いです。
遺影をリビングに飾るのはよくない?
四十九日法要が終わったあとであれば、遺影をリビングに飾ることに問題はありません。目に入りやすい場所に置くと、故人を思い出す機会が増えます。
ただし、遺影のフレームや飾りが暗い色の場合、部屋の雰囲気と調和しないこともあるでしょう。その場合、画像が小さくなるよう再度印刷し、小さな写真立てに入れて飾ることも可能です。
出棺のとき位牌・遺影は誰が持つ?
葬儀・告別式が終了したら、火葬場へと向かうために出棺の儀が行われます。出棺の際、喪主が位牌(いはい)を、喪主の次に故人と親しかった遺族が遺影を持ちましょう。
位牌には故人の魂が宿るとされているため、両手でしっかりと持つことが大切です。また、遺影に関しても同様に、胸の位置に来るよう両手で抱えましょう。
おすすめの記事
ほかにもこちらのメディアでは、葬式に花輪を送る方法や自宅葬についても解説しています。ぜひこちらの記事もご確認ください。