火葬にかかる時間はどれくらい?火葬中の過ごし方や流れも解説

葬儀のスケジュールを把握するために、火葬にどれくらい時間がかかるのか気になっている方もいるのではないでしょうか?

火葬とはご遺体を焼いて葬ることで、日本ではほとんどが火葬により埋葬されます。ご遺体を焼くことですから、どれくらい時間がかかるのかは想像もつかないものです。

この記事では火葬にかかる時間のほかに、火葬の流れや火葬中にどのように過ごしたらよいのかなども詳しく解説します。気をつけたい注意点もお伝えしますのでぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 火葬にかかる時間は、ご遺体を燃やしてからお骨が冷えるまでの1時間前後
  • ご遺体の年齢や体格、棺に納める副葬品によってもかかる時間が異なる
  • 火葬には火葬許可証が必要

火葬とは?

火葬とは、ご遺体を焼いて遺骨の状態にする儀式です。棺に納めたご遺体を火葬炉で焼却し、お骨を骨壺に納めます。

現代の日本では火葬で埋葬するのが主流です。宗教的な背景から土葬が主流になっている国も多く、キリスト教やイスラム教、儒教の教えが影響する国では土葬の割合のほうが高くなっています。

日本でもかつては、庶民の埋葬方法として土葬が一般的で、火葬は身分が高い方に対して行われる儀式でした。しかし、衛生面での問題やスペースの確保が困難な理由から、土葬から火葬へと移行されるようになりました。

また、最近では葬儀を行わず、火葬式のみを執り行う葬儀のスタイルも増えつつあります。

火葬は1時間前後で完了する

火葬にかかる時間は1時間前後です。これは、ご遺体を燃やしてからお骨が冷えるまでの時間です。

ただし、火葬にかかる時間はご遺体の年齢や体格、棺に納める副葬品によっても異なります。

ご遺体に脂肪が多い場合は、火葬炉が過剰に温度上昇しないように低温での火葬が行われるため、時間が長くかかります。

また、燃えないもの・燃えにくいものを副葬品として入れた場合も、火葬に時間がかかってしまうため注意が必要です。あとで解説しますが、棺の中には入れるべきではないものがあるため、担当者の指示にしたがって副葬品を選びましょう

火葬炉の種類で火葬にかかる時間が変わる

火葬炉には台車式とロストル式の2種類があり、種類によっても火葬にかかる時間が変わります。

それぞれの特徴は以下のとおりです。

火葬炉の種類特徴
台車式・棺を乗せた台車をチェーンコンベアーで火葬炉に入れる
・棺の上面と側面から火を加えて燃焼させる
・空間が少ないため火葬に時間がかかる
・遺骨がきれいな状態で残る
・悪臭が出にくい
ロストル式・ロストルと呼ばれる格子に棺を乗せて火葬炉に入れる
・棺の下の風通しがよく、炎が棺を包み込むため短時間で火葬できる
・ロストルの下の受け皿で遺骨を受け止める構造になっている
・火力が高く遺骨が崩れやすい
・火葬中の臭いや音が大きい

現在の日本は、9割の火葬場に台車式が採用されていますが、都市部を中心にロストル式火葬炉が採用されています。

火葬が行われる時間帯は午前中が多い

火葬は、午前中に行われるのが一般的です。火葬の前の告別式が10時や11時などの午前中に設定されており、終了後に火葬場へ向かいます。とくに、午前11時から正午までの時間帯は火葬場に来る方が多くなるでしょう。

火葬場が開いている時間帯は午前10時から午後4時頃が一般的で、夜間に火葬を行うことはありません。火葬自体に1時間程度かかるため、遅い時間帯に開始した場合は収骨を同日に行えない可能性があります。

火葬の流れ

火葬は以下の流れで行います。

  1. 火葬場に出棺する
  2. 火葬場で火葬許可証を提出する
  3. 火葬炉の前で納めの式を行う
  4. 棺が火葬炉に納められて火葬が始まる
  5. 遺骨を骨壺に納める
  6. 埋葬許可証を受け取る

ここから、順を追って確認していきましょう。

1.火葬場に出棺する

出棺とは、火葬場に棺を移動させることです。ご遺族は出棺する前に棺をあけて、故人が生前に好きだったものや思い出の品、お花などを納めます

斎場内に火葬場がある場合は棺を台車に載せ、火葬場が離れている場合は棺を霊柩車に載せます。火葬場に向かうのは、故人の親族や縁が深かった方です。一般の参列者は葬儀後に解散になるため、出棺時には喪主が参列者の方々に挨拶をするのが一般的です。

喪主が故人の位牌、ご遺族の代表者が遺影を持って霊柩車に乗り込み、火葬場へ向かいます。

2.火葬場で火葬許可証を提出する

火葬場に着いたら、受付に火葬許可証を提出します。遺骨の分骨を希望する場合には、このときに必要枚数分の分骨証明書を発行してもらわなければなりません。

分骨する予定があらかじめ決定している場合は、事前に相談しておくと安心です。係の方の案内に従うようにしましょう。

3.火葬炉の前で納めの式を行う

納めの式とは、火葬炉の前で行う故人とお別れをするための儀式をいい、生前の姿との最後のお別れです。

火葬炉の前に棺を安置し、位牌と遺影は棺の前にある台に設置します。焼香台が用意されるので、僧侶による読経がスタートしたら喪主から順に焼香し、参列者全員が終えたら合掌します。

納めの式では、僧侶が同行していない場合、読経はされません。また、宗派や火葬場のルールによっては儀式が省略されます。

4.棺が火葬炉に納められて火葬が始まる

納めの式が終わると、棺が火葬炉に納められて火葬が始まります。

火葬が開始される合図となるボタンは、火葬場のスタッフが押すことが多いですが、地域によってはご遺族が押す場合もあるようです。喪主やご遺族が押すのが心情的に難しいようであれば、別の方に頼んでもよいでしょう。

火葬の時間は1時間程度なので、参列者は終了するまで待機することになります。

5.遺骨を骨壺に納める

火葬が完了したと連絡が入ったら、遺骨を骨壺に納める「お骨上げ」を行います。お骨上げにかかる時間は30分程度です。遺骨に直面するのがお辛い方は、収骨せずに見守るだけにすることや、収骨室の外で待機するのも可能です。

収骨室では、参列者全員が遺骨を囲み、喪主が頭のほうに立ちます。お骨上げをする順番は、故人と関係が深かった方から順に収骨するのが一般的です。2人1組となり、箸を使ってお骨を骨壷に入れていきます。

下半身から上半身へと拾っていき、最後に故人と最も縁の深かった方が喉仏を収骨します。お骨上げは地域によって違いがあり、関東では大きい骨壺を用いてすべてのお骨を骨壷に入れる全収骨、関西では小さい骨壺に一部のお骨を納める部分収骨が主流です。

宗教や地域の風習、分骨の有無によっても変わるため、担当者に手順を聞いて進めましょう。

6.埋葬許可証を受け取る

お骨上げが終わったら、骨壺を白木の箱に入れ、綿袋(きんたい)といわれるカバーをかけて遺骨がご遺族のもとに渡されます。このときに「埋葬許可証」も一緒に渡されます。骨壺を納めた箱に入れて一緒に返却されることが多いようです。

埋葬許可証は、火葬前に受付で提出した火葬許可証に火葬済みの印を押したもので、火葬したことを証明する書類です。後日、遺骨をお墓へ納骨したり散骨したり、それぞれの方法で埋葬する際に必要になります。なくさないように大切に保管しておきましょう。

火葬中の過ごし方

火葬には1時間かかります。その間はどのように過ごしたらよいのでしょうか?

控室やロビーで待機する

火葬場に控室がある場合は控室で、控室がない場合はロビーで待機するのが一般的です。控室にはお茶やお菓子が用意されているため、飲み物や軽食などをとりながら待機しましょう。

ロビーで待機することになった場合でも、近くに喫茶室が併設されている施設もあります。お手洗いや喫煙スペースもあるのでゆっくり休憩できます。

葬儀では久しぶりに会う親戚もいるでしょう。故人の思い出を語り、会話を楽しむのも1つです。

また、葬儀が終わったあとには法要や納骨のスケジュールなど、親族同士で話し合わなければならないことがたくさんあります。気持ちに余裕があれば、この機会に今後のスケジュールや手続きについて相談しておくのもよいでしょう。

精進落としの食事をとる

精進落としとは、現代では火葬後にとる会食のことを指します。

従来は、四十九日の忌明けの際に食べる料理のことを精進落としといいました。ご遺族は四十九日までは肉や魚を食べず、精進料理を食べる風習があり、精進落としとは、その精進料理から普通の食事に戻すことを意味しました。

現代ではこのような風習はほとんど残っておらず、火葬場から戻ったときにお世話になった方々へお食事を振舞います。

火葬中に精進落としをおこなう場合は、火葬場の控室か葬儀場などで席を設けます。仕出し弁当や懐石料理などの手配を葬儀会社に依頼するのも可能です。

精進落としのメニューは、洋食や中華でも問題なく、肉や魚も提供できます。ただし、エビや鯛などのおめでたい食材を出すことは避けたほうがよいとされます。葬儀会社に依頼するのであれば、安心して任せられるでしょう。

精進落としの席では、ご遺族の代表者から参列者へお礼の挨拶をします。また、僧侶も精進落としの席にお招きします。その際、僧侶には上座に座ってもらうのがマナーです。僧侶が精進落としの席を辞退されたときは、お膳料とお車代をお包みしましょう

火葬をする際の注意点

火葬には、気をつけなければならない注意点がいくつかあります。事前に確認し、スムーズに火葬が執り行えるようにしましょう。

火葬は24時間以上経過してから行う

日本の法律では、亡くなってから24時間を経過しなければ火葬ができません。これは「墓地、埋火葬に関する法律」で定められています。

この法律は昭和23年に制定されたもので、日本の医学がまだ進歩していない時代の名残です。当時は、死亡診断後に息を吹き返すようなこともあったといいます。

現在の日本の医療技術ではこのようなことはほとんどあり得ませんが、今でもルールが残っているのです。

24時間のルールには例外があり、妊娠24週未満の死産のときやコロナなどの感染症で死亡したときには、24時間以内の火葬が認められています

死産の場合は蘇生の可能性が低いこと、感染症の場合は蔓延を防がなくてはならないことが許可されている理由です。ただし、24時間以内の火葬が許可されているだけであり、24時間以内に火葬しなければならないわけではありません。

日本の一般的な葬儀では、お通夜と告別式を2日間かけて執り行ったあとに火葬されるため、24時間以内に火葬することはほとんどないと考えられます。

しかし、最近では火葬のみを行う直葬を選択する方も増えています。火葬の日取りを検討するときには24時間ルールを視野に入れておきましょう。

火葬には火葬許可証が必要になる

ご遺体を火葬するには火葬許可証が必要です。前述のとおり、火葬場に到着したら火葬許可証を提出しなくてはなりません。

自治体の窓口に「死体埋火葬許可申請書」と「死亡届」を提出することにより「火葬許可証」が交付されます。死亡届は亡くなったときに、死亡診断をした医師が記載する「死亡診断書」と一体になっています。右半分が死亡診断書、左半分が死亡届です。

死亡届に必要事項を記入して死体埋火葬許可申請書と一緒に提出しましょう。なお、死亡届は死後7日以内に提出しなければならない決まりがあります。火葬許可証は死亡届が受理されなければ発行されないため、同時に申請するのがスムーズです。

手続きできるのは、亡くなられた場所・故人の本籍地・届出人の住所地にある自治体です。代理人による申請も可能で、代行してくれる葬儀会社もあるので手続きが負担になる方は確認してみましょう。

火葬にかかる費用は地域により異なる

火葬場にかかる費用相場は1〜2万円程度ですが、地域により大きく異なります。無料で行ってくれる自治体もあれば、東京などは費用が高く7万円以上かかる地域もあります。

また、その地域に住民票がない方の火葬は、さらに費用が高くなるため注意が必要です。葬儀のプランには火葬にかかる費用が含まれていないことが多いため、火葬費用が高い地域では想定していた以上に費用がかさんでしまうことも考えられます。

火葬場の手配も葬儀会社に依頼できるので、よく確認しておくことが大切です。

入れてはいけない副葬品がある

棺の中に入れる副葬品には、入れないほうがよいものや入れてはいけないものがあります。

例えば、指輪や眼鏡などの金属製の副葬品は、燃え残ってしまったり遺骨を汚してしまったりするため、棺の中には入れないほうがよいとされています。

指輪や眼鏡などの装飾品を納めたい場合は、火葬後に遺骨とともに骨壺に納めてもらうとよいでしょう。

また、お酒が好きだった方であれば、一升びんや缶ビールなどの飲み物を入れてあげたいと思うかもしれませんが、缶やビンは燃えないため棺に入れられません。

可燃でも、大きくて水分が多いスイカやメロンのような果物も、燃焼の妨げになるため避けたほうがよいといわれます。ビニールやゴム製品、プラスチック製品などは燃やすことで環境を害してしまいます。

火葬炉の故障原因となってしまうのが、ゴルフクラブや釣り竿に含まれるカーボンが使われている製品です。また、スプレー缶・ライター・電池などは火葬炉内で爆発の危険性があります。

盲点なのが、心臓ペースメーカーです。心臓ペースメーカーもリチウム電池が使用されているため、火葬炉内で爆発を起こします。ペースメーカーをされている方の火葬は、ご遺体の損傷や火葬炉の損傷、火葬場職員の受傷を引き起こしてしまいます。

ほかの副葬品であれば、納めるときに葬儀会社の方が気づいてくれるでしょう。しかし、ペースメーカーを埋め込んでいるご遺体の場合は、必ずご遺族から葬儀会社にその旨を伝えてください。

棺の中には故人の生前の愛用品、思い出の品をたくさん入れてあげたいものですが、トラブルを防ぐためにも、判断に迷ったら必ず相談しましょう。

入れてはいけない理由
金属製の副葬品
(指輪や眼鏡など)
燃え残ってしまったり遺骨を汚してしまったりする
缶、ビン 燃えない
大きくて水分が多い果物
(スイカやメロンなど)
燃焼の妨げになる
ビニールやゴム製品、プラスチック製品など 燃やすことで環境を害す
カーボンが使われている製品
(ゴルフクラブや釣り竿に含まれる)
火葬炉の故障原因となる
スプレー缶・ライター・電池など 火葬炉内で爆発の危険性
心臓ペースメーカー リチウム電池が使用されているため、火葬炉内で爆発

分骨希望時には分骨証明書が必要になる

分骨を希望する場合には分骨証明書が必要です。分骨とは、亡くなられた方の遺骨を2カ所以上に分けて納骨・供養することです。一部の遺骨を宗派の本山に納骨したい場合、手元供養をしたい場合などに遺骨を分ける必要があります。

遺骨をバラバラにしてしまうのはよくない・縁起が悪いといわれることがありますが、分骨は法的に問題になりません。

分骨を希望する際は、分骨用の火葬証明書を火葬場で発行してもらいます。火葬証明書を渡す際に分骨を希望する旨を伝え、証明書発行を依頼しておきましょう。

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