相続の悩みやトラブルを抱えている場合、弁護士への依頼を検討している方も多いでしょう。相続には期限がある手続きも多いので、早めの相談がおすすめです。
本記事では、相続について弁護士に相談するメリットや費用の相場を解説します。弁護士の選び方も紹介するので、相続相談を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
- 弁護士に依頼すれば遺産分割がスムーズになり相続トラブルを防げる
- 相続に強く口コミ評判の良い弁護士を選ぶことが大事
- 費用を安く抑えたいなら司法書士に依頼するのもおすすめ
相続を弁護士に相談するメリット
相続を弁護士に相談するメリットは、下記の5つです。
- 相続手続きを代行してくれる
- 遺言書の作成でミスがなくなる
- 遺産分割をスムーズに進められる
- 相続トラブルを防止できる
- 相続放棄のアドバイスをもらえる
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
相続手続きを代行してくれる
弁護士に依頼すれば、相続に関するさまざまな手続きを代行してくれます。遺産相続について、弁護士が対応できる主な業務は以下のとおりです。
弁護士のメリットは、法律事務を制限なく取り扱える点です。遺産分割協議や遺留分侵害額請求など相続人同士の紛争解決に対応できるのは、弁護士の強みと言えるでしょう。
特に遺留分侵害額請求と相続放棄は手続きが複雑なため、遺族だけで行うのは大変です。遺産分割協議をする前に遺産の調査や評価をする必要がありますが、調査には役所や金融機関などへの確認をしなけばなりません。
弁護士に任せることで正確な調査を行えるので、遺産分割を終えた後に新たな財産が見つかるなどのリスクも軽減できます。
相続に関する複雑な手続きから解放されたいなら、弁護士への依頼をおすすめします。
遺言書の作成でミスがなくなる
弁護士に依頼すれば遺言書の作成をサポートしてくれるため、ミスを未然に防げます。
遺言書は法律の定める方式に則って作成しなければなりません。しかし、知識のない人が作成すると内容が無効になったり、親族間で揉め事が発生したりするリスクがあります。
法律の専門家である弁護士のサポートがあれば、形式のミスなどもないので安心です。
遺産分割をスムーズに進められる
相続人の間で意見対立があり遺産分割協議が進まない場合に、相続が得意な弁護士に交渉を依頼すれば、話し合いをうまくまとめられます。
遺産分割協議は親族間での話し合いとなるケースが多く、話がこじれてしまうことが珍しくありません。話し合いが長期化する場合がよくありますが、弁護士は感情的な対立を排除して合理的な解決策を提案できるため、遺産承継がスムーズになります。
代理人として弁護士を立てた場合、親族と直接協議をする必要がないため、精神的な負担も軽減されるでしょう。
遺産分割協議書の作成も弁護士に依頼できます。弁護士が作成すれば不備は発生しないので、法務局などでの申請手続きもスムーズです。
相続トラブルを防止できる
将来的な相続トラブルを防げるのも、弁護士に相談するメリットです。
特定の相続人が生前に贈与を受けていた場合や、特定の相続人に遺産をすべて相続させるといった遺言書がある場合、相続人間で不公平が生じやすくトラブルに発展する可能性があります。
お金が絡むと親族同士でも軋轢が生じてしまうものです。話がこじれてしまったときに、法律・交渉のプロである弁護士が間に入るだけで協議がスムーズにまとまることがあります。
弁護士に代理人となってもらえば、親族間で揉めることがないように、お互いが納得できる着地点を見つけてくれます。第三者からの客観的なアドバイスをしてくれる弁護士の存在は貴重です。
弁護士を交えずに遺産分割を行う場合、法律の解釈を誤って不利益を被ったり、将来的に不利な状況に陥ったりすることも考えられます。弁護士に依頼すれば、将来的なリスクも回避できます。
相続放棄のアドバイスをもらえる
借金を相続したくない場合、弁護士に相談すれば相続放棄についての適切なアドバイスをもらえます。
資産額が借金額を上回る場合は、その超過分だけを相続するやり方もあります。相続放棄すべきかどうか迷ったときは、弁護士に相談してアドバイスをもらうと良いでしょう。
弁護士に相続相談すべきはどんな人?
相続が発生しても、すべての場合で弁護士に相談すべきとは言い切れません。ここでは、弁護士に相続相談したほうがいい場合と相談が不要な場合を確認しておきましょう。
弁護士に相続相談したほうが良いケース
弁護士に相続相談したほうが良いケースは、以下のとおりです。
- 相続人が2人以上いる
- 相続人との間で意見の相違がある
- 将来的に相続トラブルが発生する可能性がある
- 相続手続きを進めるのが難しい
- 相続放棄を検討している
相続人が2人以上いる場合は遺産分割協議を行う必要があるため、相続に詳しい弁護士への相談をおすすめします。弁護士に依頼すれば、相続人との話し合いをスムーズに進められます。
遺産相続において親族が対立すると、当事者同士での解決は困難です。弁護士は仲介役として様々な観点から円満な解決方法を提案してくれるため、冷静な話し合いが可能になります。
相続放棄を検討しているなら、早めに相談したほうが賢明です。相続放棄は相続発生後3カ月以内に手続きを行う必要があるので、まだ準備を始めていない場合は早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相続相談しなくても良いケース
弁護士に相続相談しなくても良いケースは、以下のとおりです。
- 相続人が1人しかいない
- 相続人の間で争いが発生していない
- 相続手続きの流れが知りたいだけ
- 葬儀やお墓の引き継ぎなど慣習や宗教に関する相談
配偶者が遺産の大部分を相続する場合や、相続トラブルが起こりそうにない場合は弁護士への相談は不要です。そもそも法律に関連しない問題では、弁護士に相談しても有益ではありません。
ただし、どのような相続でもトラブルが起こる可能性はあります。少ない遺産をめぐって争いに発展する可能性もあるため、いざという時には弁護士への依頼を選択肢に入れておきましょう。
遺産相続を弁護士に依頼する費用の相場
弁護士に依頼した際に発生する費用は、主に3つあります。
- 法律相談料
- 着手金
- 成功報酬
各費用の目安を解説していきます。
法律相談料
弁護士に遺産相続について相談するときは、法律相談料を支払う必要があります。
相談料の目安は30分ごと5,000円~1万円です。
最近では初回相談を無料で対応する事務所も増えています。相談料は事務所によってバラバラなので、相談する前にしっかり確認しておきましょう。
着手金
着手金は、相続手続きに着手する段階で発生する費用です。金額は20~30万円が相場ですが、遺産の総額や内容の複雑さに応じて金額が変動する事務所もあります。
変動制の場合、相場は20万円〜200万円以上と幅があるので、相談時に確認するといいでしょう。ただし、思うような成果が得られなかった場合でも、基本的に着手金は返金はされません。
成功報酬
成功報酬は、依頼者の望む結果を実現できた場合に支払う費用です。実際に取得できた金額(評価額)を基準に算出するのが一般的で、「回収金額の何%」のようにパーセンテージで設定している事務所が多いです。
遺産相続の弁護士費用は誰が払う?
弁護士費用を負担するのは、弁護士に依頼した人です。依頼者が複数人いる場合は、全員で均等に負担しても良いですし、代表者が負担しても構いません。
弁護士費用の支払いについて法的なルールはないので、当事者の納得のいくように決めましょう。
ただし、遺産分割トラブルに巻き込まれた場合でも、弁護士費用は自分で負担しなければなりません。相手の言い分が不当であっても、費用を払ってもらうことはできません。
費用は自己負担になることを理解した上で、弁護士に依頼しましょう。
相続を相談する弁護士の選び方
相続を相談する弁護士を選ぶときは、以下のポイントをチェックしましょう。
- 相続に強い専門の弁護士を選ぶ
- 口コミ評価の高い弁護士を選ぶ
- 無料相談のある弁護士を選ぶ
各ポイントについて説明します。
相続に強い専門の弁護士を選ぶ
弁護士によって得意分野は異なるので、相続問題を得意とする弁護士を選ぶことが重要です。
いろんな分野に幅広く対応する弁護士だと、相続を専門分野として注力する弁護士に比べて専門知識やノウハウが圧倒的に少なく、最新の情報にも疎い可能性があります。相続問題を解決したいなら、相続問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。
相続に強い弁護士を見分ける方法は、以下のとおりです。
- ホームページに相続専門の記載がある
- 相続に関する著作や研究成果がある
- 遺産相続問題を解決した実績がある
- 経験年数が長い
- 相続税の知識や節税の助言ができる
事務所のホームページには過去の実績が記載されているので、専門分野をある程度判断できます。取扱件数の半分以上を相続が占めていれば、一定の経験があると考えて良いでしょう。
相続人同士の争いを解決するだけでなく、相続税まで考慮し助言できる弁護士の方が、相続が得意な弁護士と言えます。
弁護士の活動年数も重要なポイントです。経験年数が長く実績が豊富なら、いざという時に頼りになります。
口コミ評価の高い弁護士を選ぶ
事前に利用者の口コミを見て、評価の高い弁護士を選ぶことも大切です。ホームページを見ただけでは弁護士の良し悪しがわからないので、実際に弁護士に依頼した人の口コミは必ずチェックしましょう。
実際の依頼者・相談者による口コミを見ることで、事務所のホームページに載っていないリアルな情報を把握できます。
弁護士がどれだけ自分のことをアピールしても、単なる自己評価に過ぎません。実際に依頼した人の評価ほど、参考になるものはないと言えます。口コミで評価の悪い弁護士は避けたほうが無難です。
無料相談のある弁護士を選ぶ
弁護士との相性を確かめるために、無料相談のある事務所を選びましょう。無料相談なら何軒相談しても料金はかからないので、複数の事務所に相談して比較するのがおすすめです。
1人の弁護士から説明を聞いただけでは、その善し悪しが判断できません。何人もの弁護士に相談して、コミュニケーションの取りやすさやアドバイス内容を比較すれば、信頼できる弁護士を選びやすくなります。
無料相談を利用するときは、以下のポイントをチェックしてみましょう。
- 誠実に質問や疑問に答えてくれるか
- 説明がわかりやすいか
- 依頼者にとって不利な情報まで教えてくれるか
- 相談に対する対応が早いか
- 費用は明確か
依頼者にとって望ましくない情報も教えてくれるかどうかが、良い弁護士・悪い弁護士の違いとなります。相続手続きでは依頼者にとって有利に働くことばかりではないので、事前に都合の悪い情報まで教えてくれる弁護士なら安心です。
明朗会計な事務所なら、相談時に正確な見積書を出して、費用の説明をしてくれます。費用が明確でわかりやすく説明してくれる弁護士や、相談しやすい弁護士なら安心して依頼できるでしょう。
相続相談するなら弁護士と司法書士のどっち?
各家庭の状況によって、弁護士と司法書士のどちらに相続相談をすべきかが異なります。
- 相続トラブルを解決したいなら弁護士
- 費用を安く抑えたいなら司法書士
依頼する予定の業務内容に応じて、弁護士と司法書士を使い分けましょう。
相続トラブルを解決したいなら弁護士
すでに相続トラブルが発生している場合は、弁護士に依頼しましょう。弁護士は紛争解決の専門家なので、司法書士は対処できない問題も解決可能なことが多々あります。
司法書士は140万円以下の民事事件の代理人にはなれても、遺産分割協議など家事事件の代理人にはなれません。相続紛争や遺産分割問題に関する調停・裁判での代理交渉ができるのは、弁護士だけです。
弁護士の業務範囲は広いため、不測の事態にも迅速に対応できます。すでに紛争になってしまっているケースだけでなく、将来的にトラブルが起こりそうな場合は、弁護士に依頼するのが良いでしょう。
費用を安く抑えたいなら司法書士
相続手続きを依頼する費用を安く抑えたいなら、司法書士がおすすめです。一般的に司法書士は弁護士の費用より安い傾向にあります。
例えば相続放棄を依頼する場合、司法書士費用は3~5万円が相場ですが、弁護士に依頼すると5~10万円ほどかかります。紛争性のない相続であれば、司法書士への依頼も有力な選択肢となるでしょう。
ただし、依頼費用は個々の専門家が決めているので、一概に「司法書士のほうが安い」とは言えません。事前に複数の弁護士・司法書士から見積もりを取って、費用を比較しながら依頼先を決めましょう。
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