亡くなった方を火葬する際に必要な手続きをご存知でしょうか?
亡くなった方を火葬する際には、火葬場で「火葬許可証」の提出が必要です。火葬許可証がなければ火葬できないため、必ず入手しなければなりません。
この記事では、火葬許可証の発行手順や手続きの注意点、埋葬許可証との違いなどを解説します。再発行についてもご説明しますので、ぜひ参考にしてください。
- 火葬許可証を取得せず火葬を行うのは違法行為にあたる
- 火葬許可証は役所に死亡届を提出する際に同時に手続きするのが一般的
- 火葬の前に提出した火葬許可証に、火葬済みの印を押したものが埋葬許可証になる
火葬許可証とは火葬の許可を証明する書類
火葬許可証とは、亡くなった方のご遺体を火葬するための許可を証明する書類です。火葬許可証がなければ火葬場で火葬してもらえません。取得せずに火葬を行うのは違法行為にあたります。
日本では必ずしも火葬を選ぶ必要はなく、土葬も認められています。かつては、日本でも一般の庶民は土葬が主流でした。しかし、衛生面での問題やスペースの確保が困難な理由から、徐々に土葬から火葬へと移行されるようになったのです。
現在では、土葬自体を禁止にしている地域もあり、9割以上の方が火葬を選択しています。最近では葬儀を行わず、火葬式のみを執り行うシンプルな葬儀のスタイルを選択する方も増えています。
発行された火葬許可証を火葬場に到着したら提出する必要があるので、葬儀の前には必ず取得しておかなければなりません。
通常は亡くなってから7日以内に提出する
火葬許可証にはとくに提出期限が定められていません。ただし、親族が亡くなったときに役所に提出する死亡届は、死亡を知った日から7日以内に提出することが定められています。国外で亡くなられた場合は死亡を知った日から3カ月以内です。
火葬許可証は死亡届を提出する際に、同時に申請するのが通常です。そのため、火葬許可申請書も必然的に7日以内に提出することになります。
死亡届の提出が遅れてしまうと火葬ができないのはもちろん、死後のさまざまな手続きが停滞し、届出人に5万円以下の過料が科される可能性があります。
埋葬許可証との違い
埋葬許可証とは、ご遺体を埋葬するときに必要な書類です。一般的には、火葬後の遺骨をお墓に納骨するときに必要になります。また、遺骨を散骨する場合や、お墓を別の場所に移す改葬のとき、火葬ではなく土葬で埋葬する際にも埋葬許可証が必要です。
ご遺体を火葬した場合は、火葬の前に提出した火葬許可証に火葬済みの印を押したものが埋葬許可証となります。すなわち、火葬許可証と埋葬許可証は書類としては同じものです。
火葬場は火葬が無事に終了すると、火葬許可証に印を押し火葬したことを証明します。この書類が、遺骨とともにご遺族のもとに返却され、埋葬許可証として機能します。
火葬許可証発行の手順と注意点
火葬許可証の発行手順は以下のような流れです。
- 医師から死亡診断書をもらう
- 死亡届・火葬許可申請書を記入する
- 市区町村役場の窓口に提出する
ここから、それぞれの手順と火葬許可証の発行について注意点を解説します。
医師からの死亡診断書が必要になる
火葬許可証を発行する際には、まず医師から死亡診断書を受け取らなければなりません。火葬許可証発行に必要な死亡届が、死亡診断書と一体になった書類であるためです。書類は、右半分が死亡診断書、左半分が死亡届になっています。
死亡診断書は、死亡を確認した医師から発行されます。医師の診療下で死亡が確認された場合に、亡くなったことを証明するための書類です。死亡診断書の作成は、医師または歯科医師のみに認められています。
自宅療養などで、最後に医師が診察したときから24時間以内に亡くなられたときも、死因が持病であることが判断できる場合には発行が可能です。事件や事故、孤独死などで検死により死亡が確認された場合には、警察から「死体検案書」が発行されます。
死亡届の提出で発行手続きが可能になる
火葬許可証の発行は死亡届の提出により手続きが可能です。死亡届の提出により故人が死亡したとみなされ、火葬許可証の発行以外にも、さまざまな行政手続きが可能になります。
死亡届の記載事項は以下のとおりです。
- 死亡届の提出日
- 亡くなった方の氏名・性別・生年月日
- 亡くなった日時
- 亡くなった場所
- 亡くなった方の住所・世帯主の氏名
- 亡くなった方の本籍
- 亡くなった方の配偶者の有無
- 亡くなったときの世帯の仕事
- 亡くなった方の職業
- 届出人の情報・押印
亡くなった日時と亡くなった場所は、右半分の死亡診断書に医師によって書かれた内容をそのまま記載します。
本籍地は、わからなければ住民票の取得で確認できます。本籍地は遺産相続の手続きなどでも必要になる情報なので、住民票を取得して確認しておくとよいでしょう。
亡くなったときの世帯の仕事と、亡くなった方の職業は国勢調査のために必要な情報なので記載は任意です。わからなければ空欄でも問題ありません。
届出人の情報に記載するのは、亡くなった方との関係・住所・本籍地・筆頭者の氏名・署名・生年月日です。押印が必要なので印鑑を忘れずに持参しましょう。
死亡届と火葬許可申請書は役所に提出する
死亡届と火葬許可申請書の提出先になるのは、以下の場所にある役所です。
- 亡くなられた場所
- 故人の本籍地
- 届出人の住所地
提出先の役所には、故人の住所地にある役所は含まれないため注意が必要です。
死亡届を提出する際に、窓口にある「火葬許可証申請書」に必要事項を記入して一緒に提出しましょう。
書類に不備がなければ、その場で火葬許可証が発行されます。内容に相違ないか確認し、火葬のときまで大切に保管しましょう。
葬儀社が代理で手続きしてくれる場合もある
火葬許可申請や死亡届の手続きは、親族以外の代行も認められているため、葬儀社が代わりに行ってくれる場合があります。実際に、葬儀社に代行してもらうケースが多いようです。
ただし、死亡届の記載は基本的に届出人が行うのが原則です。記入に間違いがあった場合は葬儀社の方では正しい内容がわからないため、ミスがないように記載しなければなりません。
万が一、記載に誤りがあった場合は、届出人の訂正印を押したうえで修正します。葬儀社の方に印鑑を預けなければならないことを覚えておきましょう。
注意しておきたいのは、葬儀のプランに手続きの代行サービスが含まれているかどうかです。葬儀社の基本プランに含まれていることが多いですが、火葬式のみなどのシンプルな葬儀ではサービス内容が限定されるため、手続きの代行サービスを含まないこともあります。
プランに含まれていなければ、オプションとしてサービスを追加できる場合もあります。手続きが大変な場合は葬儀社への代行を検討するとよいでしょう。
火葬は24時間以上経過してから行う
日本の法律では、亡くなってから24時間以内に火葬することが禁止されています。これは、日本の医療技術が進歩していなかった時代、死亡診断後に息を吹き返すような事例があったからであり、法律でも定められています。
例外で24時間の火葬が認められているのが「妊娠24週未満の死産のとき」や「感染症で死亡したとき」です。死産の場合は蘇生の可能性が低いこと、感染症の場合は蔓延を防がなくてはならないことが理由です。
通夜や葬儀を行わない直葬の場合でも、すぐには火葬ができません。火葬の日取りは24時間ルールを視野に入れて検討しましょう。
火葬の流れ
火葬は一般的に、お通夜と告別式のあとに行います。告別式と火葬は同日で、告別式が終了したら、そのまま火葬場へ向かう流れです。
ただし、お通夜を省略する一日葬や、お通夜も告別式も行わず火葬式のみを行う葬儀のスタイルを選択する方も増えています。
火葬の流れは以下のとおりです。
- 火葬場に出棺する
- 火葬場で火葬許可証を提出する
- 納めの式後に火葬される
- 遺骨を骨壺に納める
- 埋葬許可証を受け取る
ここからは、火葬のみの流れを解説します。
1.火葬場に出棺する
安置している棺を火葬場へ移動させることを出棺といいます。ご遺族は、出棺する前に棺をあけて、故人が生前に好きだったものや思い出の品、お花などを納めます。
火葬場に向かうのは、故人の親族や縁が深かった方のみで、ほかの参列者は葬儀後に解散です。そのため、出棺時には喪主が参列者に挨拶をするのが一般的です。
喪主が故人の位牌、ご遺族の代表者が遺影を持って霊柩車に乗り込み、火葬場へ向かいます。斎場内に火葬場がある場合は棺を台車に載せて火葬場へ移動します。
2.火葬場で火葬許可証を提出する
火葬には火葬許可証が必要です。火葬場に着いたら、受付に火葬許可証を提出します。火葬許可証は忘れてはいけない大切な書類のため、葬儀社が保管・提出を代行してくれる場合が多いです。
また、遺骨の分骨を希望する場合には、このときに分骨証明書の発行も依頼しておきます。分骨することがすでに決定しているのであれば、これも事前に葬儀社に伝えておくとスムーズです。
3.納めの式後に火葬される
納めの式とは、炉前で行う故人とお別れをするための儀式です。宗派や火葬場のルールによっては儀式が省略されます。
僧侶が同行している場合は読経が始まり焼香を行います。棺の窓を開けて故人の生前の姿が見られるのはこれが最後です。
火葬が始まったら、参列者は別室で待機します。終了するまでは1時間程度です。火葬を待つ間に、精進落としと呼ばれる会食を行うケースもあります。
4.遺骨を骨壺に納める
火葬が完了したら、遺骨を骨壺に納める「お骨上げ」を行います。
お骨上げは、故人と関係が深かった方から順に収骨するのがマナーです。2人1組となり、箸を使ってお骨を骨壷に入れていき、最後に故人と最も縁の深かった方が喉仏を収骨します。
5.埋葬許可証を受け取る
収骨後は、遺骨とともに埋葬許可証を受け取ります。
お骨上げが終わったら、骨壺を埋葬許可証と一緒に箱へ納め、綿袋(きんたい)といわれるカバーをかけてご遺族のもとに渡されるのが一般的です。ただし、埋葬許可証の渡し方は火葬場によっても異なるため、必ず確認するようにしましょう。
分骨する際は分骨証明書が必要
分骨が決まっており、火葬後に遺骨を分けたい場合は、すぐに分骨証明書が必要になります。火葬場で火葬許可証を提出するときに一緒に依頼しておきましょう。
分骨とは、亡くなられた方の遺骨を2カ所以上に分けて納骨・供養することをいいます。
あとから分骨することが決まった場合は、火葬を行った場所の役所で発行してもらうことが可能です。また、すでにお墓に納骨したあとに分骨を依頼する場合は、墓地の管理者に分骨証明書を発行してもらいます。
日本では、昔から一部の遺骨を信仰している宗派の本山に納骨する風習があります。その際には、遺骨を分けるため分骨証明書が必要です。
他にも、親族が遠方にいるため遺骨を分けて埋葬したいケースや、遺骨の一部を散骨・手元供養したいケースなど、さまざまなパターンで分骨証明書が必要になります。
火葬許可証・埋葬許可証を紛失したら?
火葬許可証・埋葬許可証は大切なものなので、なくさないように大切に保管しましょう。万が一紛失してしまった場合は再発行が可能です。どのような手続きが必要なのかを解説します。
死亡届が受理された役所で再発行できる
発行後5年経っていない火葬許可証・埋葬許可証は、役所で再発行可能です。申請先は、火葬許可証を発行してもらった自治体の窓口です。5年以内であれば、火葬許可申請をしたときの情報が残っているため再発行できます。
再発行の申請ができるのは、亡くなった方の直系親族または祭祀承継者です。初回申請のときと同じように、代行での手続きはできないため注意してください。また、手数料も必要になります。申請者の本人確認書類と印鑑を持参し手続きしましょう。
5年経過後は火葬場で再発行を申請する
発行後5年以上経っている火葬許可証・埋葬許可証は役所で再発行できない可能性があります。その場合は火葬場に「火葬証明書」を発行してもらったうえで再発行手続きを行います。
公営の火葬場では火葬簿が30年間保管されているため、火葬証明書の発行が可能です。民間でも保管されている可能性があるので問い合わせてみましょう。
火葬証明書が入手できたら、死亡届を提出した役所に申請すれば、再発行してもらえます。
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