香典返しの「のし」とは?掛け紙の種類や表書きのマナーについて解説

「香典返しののしとはよく聞くものの、どういったものなのかわからない」「香典返しにのしは必要なの?」など、香典返しの「のし」についてお悩みではありませんか?

「のし」と聞くと、贈りものにつける紙を想像する方もいるでしょう。しかし、「のし」とは贈りものにつける飾りを指し、紙そのもののことではありません。また、「のし」は香典返しのような弔事ではなく、おめでたいシーンでつけるものです。

この記事では、香典返しの「のし」についてや掛け紙の種類、表書きのマナーを解説します。のしに関する注意点についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 香典返しには「のし」をつけず、水引のみが印刷された「掛け紙」をつける
  • 掛け紙とのし紙の違いは「のし」があるかどうか
  • 掛け紙には種類があり、宗教・宗派や地域によって使用するものが異なる

香典返しの「のし」とは

そもそも「のし(熨斗)」とは、贈り物につける紙そのもののことではなく、ご祝儀などの包装紙につける飾りを指します。以前は本物の鮑(あわび)を使用していたため、正式には「熨斗鮑(のしあわび)」といいます。

注意したいのは、「のしはおめでたいシーンでつけるもの」である点です。つまり、香典に対するお礼である香典返しには向きません

香典返しの場合、本来であれば品物に紙をかけ、のしはつけずに水引を結びます。

しかし、現在では水引が印刷された「掛け紙」をつけるのが一般的です。品物の金額に関係なく、たとえ1,000円のものでも掛け紙をつけのがマナーです。

香典返しの掛け紙とのし紙の違い

掛け紙とのし紙の異なる点は、のしが印刷されているかどうかです。水引のみが印刷されているものを掛け紙、のしと水引が印刷されているものはのし紙といいます。

前述したように、「のし」はお祝いとして贈る品物につけるものであるため、香典返しに適しているのは掛け紙です。反対に、お祝いごとには掛け紙ではなくのし紙を使用します。

のし紙も、品物に紙をかけて水引を結び、のしを添えるのが本来のやり方です。しかし、現在ではのしも印刷されている紙を使用することが多い傾向にあります。

香典返しに使用する掛け紙の種類

掛け紙にはいくつか種類があり、宗教・宗派や地域の風習によって適しているものが異なります。

水引の結び方は、一度結ぶと簡単にはほどけないことから「二度と同じことが起きないように」という意味を持つ「結び切り」が一般的です。そのほか、「末長くおつきあいをする」という意味を持ち、慶事でも弔事でも使用できる「あわじ結び」もあります。

ここでは、香典返しに使用する掛け紙の種類をご紹介します。

一般的なのは黒白のし(蓮の絵なし)

蓮の絵が入っていない黒白のしは、もっとも一般的な掛け紙です。仏式やキリスト教式、神式など、宗教・宗派に関係なく使用できます。

仏式かどうかわからない場合や、ほかの宗教を信仰しているケースであれば、蓮の絵が入っていない黒白のしを選ぶとよいでしょう。

掛け紙の種類は複数あるため、選択を誤ってしまうと、どれだけよい品物を選んだとしても台無しになってしまいます。どの掛け紙が適しているのか、事前にきちんと確認する必要があるでしょう。

仏式では黒白のし(蓮の絵あり)

仏式では、蓮の絵入りの黒白のしを使用します。黒白のしの掛け紙には、蓮の絵入りのものとそうでないものの2種類があり、そのうち蓮の絵入りのものは仏式でのみ使用できる掛け紙です。

なぜ「蓮の花」なのかは、極楽には蓮の花が咲き乱れているという仏教の考えがあるためです。ほかの宗教・宗派であるなら、蓮の絵が入っていないものを選びましょう。

蓮の絵が入っていないものは、宗教・宗派にかかわらず使用できる掛け紙です。仏式で、関西〜西日本などの黄白のしが一般的な地域でなければ、どちらを使用しても問題ありません。

西日本では黄白のし

関西〜西日本、北陸では、水引が黒と白ではなく黄と白の「黄白のし」を使用する地域もあります。黄白のしは仏教と結びつきの強い蓮の花が描かれていないため、キリスト教式や神式、無宗教の場合でも問題なく使用が可能です。

また、地域によっては四十九日や一周忌までは黒白のしを使用するところでも、三回忌や七回忌、十三回忌以降の周忌を機に黄白のしに変わる場合があります。

掛け紙の表書き

掛け紙の表書きとは、水引の上に記載する文言のことです。表書きも宗教・宗派、地域によって異なるため確認が必要です。ここでは、掛け紙の表書きを宗教・宗派ごとにご紹介します。

仏式に使用できる表書き

仏式で使用する表書きとして一般的なのは「」です。「志」の一文字には、「心ばかりのお返しをする」という意味が込められています。

仏式ではほとんどの場合「志」と記載しますが、関西〜西日本では「満中陰志(まんちゅういんし)」を使用します。満中陰志とは、香典に対するお礼として忌明けの報告とともに贈る品物のことを指すため、意味は香典返しと同じです。

「満中陰志」を使用する地域では、故人が亡くなってから四十九日までの間を「中陰(ちゅういん)」、忌明けを迎えることを「満中陰(まんちゅういん)」と呼びます。

たとえば当日返しなど、忌明けを待たずに品物を贈るときは「満中陰志」よりも「志」のほうがよいでしょう。

キリスト教式・神式に使用できる表書き

キリスト教式や神式に多く使われる表書きは「偲草(しのびくさ)」です。「故人を想う気持ちを品物に代えて贈る」という意味があります。

地域や家庭によっては「偲び草」と送りがなを入れて記載することもありますが、どちらも間違いではありません。そのほか「志」もよく使われます

厳密にいうと、キリスト教式や神式には「香典返し」という風習がありません。しかし、神式では五十日祭、キリスト教式では追悼ミサや召天記念日といった忌明けにあたる日が存在します。

そして香典返しと同じように、忌明けのタイミングで御玉串料(おたまぐしりょう)や御花料(おはなりょう)へのお返しを行います。

宗教・宗派問わずに使用できる表書き

仏式で使われる「志」は、宗教・宗派を問わずに使用できる表書きです。キリスト教式や神式はもちろん、無宗教でも使用できます。

表書きをどのように書けばよいかわからない場合は、弔事や地域の慣習に詳しい方や葬儀社などに確認し、それでも不安なときは「志」と書くのが無難です。

香典返しののし(掛け紙)に関する注意点

香典返しの掛け紙には、さまざまなルールやマナーがあります。ここでは、香典返しの掛け紙に関する注意点について解説します。

香典返しは忌明けのタイミングで贈る

香典返しは、忌明けのタイミングで贈るのが一般的です。ただし、宗教・宗派によって忌明けのタイミングは異なります。宗教・宗派別のタイミングは以下のとおりです。

宗教・宗派忌明けのタイミング
仏式四十九日の法要後
キリスト教式カトリック追悼ミサ後
プロテスタント召天記念式後
神式五十日祭後
無宗教葬儀後すぐでも可能

仏式の忌明けは四十九日の法要後です。そのあと2週間以内を目安に香典返しを贈るとよいでしょう。

キリスト教式は、カトリックかプロテスタントかによって異なります。カトリックでは、故人の死後30日目に行われる追悼ミサ後が忌明けのタイミングです。

一方プロテスタントでは、故人が亡くなってから1カ月後に行われる召天記念式後が忌明けとされています。

それぞれ忌明けから1カ月以内を目安に、お返しをするとよいでしょう。

神式では、故人が亡くなった日を含めて50日目に五十日祭という霊祭を執り行います。五十日祭が忌明けに該当し、五十日祭のあと開かれる会食の際にお返しを渡すか、後日郵送するのが一般的です。

そして無宗教には、そもそも忌明けという概念が存在しません。そのため、葬儀後すぐに香典返しを贈っても問題ありません。

内のしか外のしかは渡し方で使い分ける

掛け紙を「内のし」にするか「外のし」にするか、という問題もあります。内のしとは、品物に掛け紙をつけてから包装することをいい、反対に外のしとは、品物を包装してから掛け紙をつけることをいいます。

内のしであれば掛け紙が包装紙で隠れるため、一目見ただけでは香典返しだとわかりません。そのため香典返しは内のしにするのが一般的ですが、どちらを選択するかは香典返しの渡し方によって使い分けるとよいでしょう。

たとえば手渡しなら、外のしにしたほうが香典返しであるとすぐわかるためスムーズに渡せます。しかし、郵送する場合は内のしにしないと掛け紙が汚れてしまう可能性があります。

そのほか、地域によっても異なる場合があるため、念のため確認しておくと安心です。

香典返しの包装には地味なものを使用する

香典返しの包装紙は、できるだけ地味なものを選びましょう。派手な色味やデザインのものは、香典返しにふさわしくないためです。淡いブルーやグレー、紫など、落ち着いた色味のものがよいでしょう。

また、品物を包む際にも注意点があります。品物は好きなように包めばよいのではなく、包み方にもルールがある点です。包装紙を折り合わせるときは、左側が上に来るように重ねます。

着物と同じように、「不幸があったときは左側が上」ということを覚えておきましょう。

香典返しを郵送する場合は挨拶状をつける

香典返しを郵送するなら挨拶状(お礼状)をつけましょう。手渡しであれば口頭で挨拶やお礼を伝えられるため不要ですが、郵送の場合、何もつけずにただ品物だけ送るのはマナーに反してしまいます。

挨拶状は、さまざまなルールに従って書かなければなりません。たとえば、以下のようなルールがあります。

挨拶状のルール
  • 頭語・結語を使用する
  • 句読点を使用しない
  • 忌み言葉を避ける
  • 「逝去」は使用しない
  • 宗教・宗派によって使用すべき言葉が異なる

挨拶状では、「謹啓・拝啓」などの頭語や「謹白・敬具」などの結語を使用するのがマナーです。また、「弔事をスムーズに終えられるように」という意味で句読点は使用せず、代わりにスペースや改行を使用します。

「重ね重ね」「ますます」といった同じ言葉を繰り返す「重ね言葉」や、「生きる」「死ぬ」などの、生死に関する直接的な言葉は避けるようにしましょう。「逝去」も、故人に対する敬語であるため身内使用するのは不自然です。

そのほか、仏教では「四十九日」と呼ぶ忌明けの法要がキリスト教では「追悼ミサ」や「召天記念日」であったりなど、宗教・宗派によって使用すべき言葉が異なります。

さまざまなルールを押さえたうえで挨拶状を書くようにしましょう。

表書きには黒の墨を使用する

表書きには黒の墨を使用するのが一般的です。ただし、香典返しを贈るタイミングによって使用する墨が異なります。

四十九日前 薄墨
四十九日後 黒墨

香典返しは忌明け後に贈るのが一般的であるため、黒墨を使用する機会のほうが多いでしょう。しかし悲しみを表現したいときは、四十九日後であっても薄墨をしてもよいとされています。

表書きの下段には喪家の姓を記載する

表書きの下段、つまり水引の下に贈り主の名前を記載します。姓のみの場合もありますが、姓のあとに「家」をつけることもあります。

そのほか、喪主の名前をフルネームで書くケースや、葬儀を取り仕切る喪主と葬儀費用を負担する施主が異なるときに、両者の名前を連名で記載することなどもあるためパターンはさまざまです。

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